(実際の事例)家で90歳以上の祖母が転倒し、肘の皮膚が裂けて出血も多量あり。その時の理学療法士の対応。反省点も振り返る。

命を守る!救急と災害の備え

訪問リハビリで初めての経験

お昼過ぎ、利用者のお家に到着。

玄関のチャイムを押しました。

中から2人の声がしています。

私が玄関先で挨拶をすると、パタパタパタと歩く音がして娘さんがこちらに向かってきました。

玄関に出てきた娘さんから突然言われます。

「午前中に、1人でいた母がリビングで転倒して右肘を怪我して出血したようです。」と伝えれらました。

娘さんも今着いたばかりのようです。

娘さんが帰ってきた時に部屋のカーペットには血が付いており、本人を見ると右肘の傷口は大きく急いで消毒したとのこと。

消毒について

切り傷の正しい応急処置

  1. 洗う(洗浄)
    傷口やその周辺についた砂や汚れを、たっぷりの水道水(流水)で洗い流します。石鹸を泡立てて優しく洗うと効果的です。
  2. 止血する
    清潔なガーゼやティッシュを傷口に当て、上から数分間しっかりと押さえます。
  3. 保護する(モイストヒーリング)
    傷口を消毒せず、ワセリンなどを塗ったガーゼや、市販のモイストヒーリングパッド(キズパワーパッドなど)を貼ります。乾燥させないことで、早く綺麗に治すことができます。 [12345]

あんなに大きな傷を対応することは普通ではない

幸い、出血は帰ってきた時には止まっていたようです。

娘さんは少し慌てる様子。しかしながら、母親のそばを離れて玄関に出てきています。

つまり目を離しても大丈夫なレベルと考えます。本人の緊急性はそれほど高くないのではと推測します。

娘さんからの報告を受け、本人と傷口の状態を確認する必要があります。

母親はどのような状態か?

私が慌てる訳にはいかないので、できるだけ慌てずいつも通りにリビングに向かいます。

リビングのドアを開けると、母親はいつものようにソファーで座っています。

挨拶すると「さっきこけて大変だったんよ。」と少し興奮し、早口で話されます。

気が動転しており、転倒した理由や転倒の場所、尻餅をついたかどうか転倒方向ははっきりしません。

扇風機のスイッチを押そうとして転倒したと本人から転倒の経緯を聞きました。右肘の出血になるような家具が扇風機の周囲には見当たりません。受傷機転や転倒方向は部屋の環境からは判断できませんでした。

とりあえず、意識障害はなさそうです。

次に出血量を確認しようと思いました。

大量出血の場合、救急車を呼ぶ必要も出てきます。

出血性のショックの場合の5P

1.蒼白(pallor)
2.虚脱(prostration)
3.冷汗(perspiration)
4.脈拍触知不能(pulseless)
5.呼吸不全(pulmonary deficiency)

この症状はありません。

出血量

一般的に、人間の循環血液量は体重の1/13(体重の約8%)と言われています。

救急では一般的に体重70kgとして計算するため、循環血液量は約5,000mLとして考えます。

循環血液量5,000mLのうち、推定出血量750mL以上、15%以上の血液が失われることでショック症状が現れるようになります。

今回の場合は小柄な母親なため、半分の35kgと仮定するなら325mlの出血でショック症状が現れます。

意識・出血量ともに問題はなさそう

床に血は落ちています。ゴミ箱の中にある傷口を抑えたティッシュも血は多量には付いていません。

そこまでの出血量ではなさそうです。

傷口の確認

本人はソファーに座っていますが、右肘を見ると8センチの切り傷があります。

大きな傷(切創)です。

表皮が裂け、皮下脂肪が露わになっていますが、血は止まっています。

この傷の処置は私の人生で一度も無いと間違いなく言える大きな傷口です。

転倒による骨折の可能性

他の部位に骨折の可能性はないか、座った状態で視診と触診で確認しました。

上腕・手関節・脊柱・大腿骨に異常はなし。四肢を動かすことができ、頭部も異常なし。

転倒した後に自分で立ち上がってソファーに移動しています。

1度立ち上がってもらい、娘さんと一緒に全身の腫脹や発赤が無いか確認しました。

立っていると左の臀部に少し痛みがあると訴えがありますが、左大腿骨や坐骨部周囲に腫れや内出血はありません。

やはり骨折はなさそうです。

それでは、傷口の処置をしていきます

最初の傷口をもう1度見ます。

これだけ大きい傷口は家で放っておいて治るものとは考えにくい。

傷口の処置の前に器具を使ってバイタルを確認します。

血圧・脈拍:正常
血中酸素濃度:99%
体温:正常

バイタルに異常なし。

この後どうすることになるかは今はわかりません。

一旦、傷口が大きくならないようにドレッシング材であるマルチフィックスパッドが家にあり、それで傷口の保護を行うことにしました。

ここが問題です。

私は理学療法士であり、傷口に対する処置や今後この傷に対するアプローチはわからないのです。

わからないながらも、この傷口をそのままに病院受診するまでの間、

そのままにしていてはいけないと判断しました。

傷口に縫合が必要でしょうか?

するかしないか、どちらにしても外科の受診が必要と判断しました。

所属先の管理者に報連相

私の判断が正しいかを含めて、管理者に電話で指示を仰ぐことにします。

電話で傷口のことを言う必要があるので、傷口の状態をさらに詳しく確認します。

大きさを手持ちのメジャーで測定しました。8cm。

深さも確認。1mm。

管理者に連絡し、傷口の大きさや深さを報告。

報連相の結果。かかりつけ医の判断を仰ぐことになりました。

かかりつけ医に電話し、やはり外科に受診することになりました。本人は歩けるため、娘さんの車で病院に向かうことになりました。

病院受診後に処置内容を娘さんから連絡してもらうことになり、今回の件は終了となりました。

ここからは帰ってから、外傷に対する対応について教科書で振り返る内容です。

けがに対する応急手当ての必要性

傷には

  • 出血
  • 痛み
  • 細菌感染 の危険性があります。

開放性の傷の特徴

切り傷(切創):傷口が大きく出血が多い場合には、医師による縫合処置を要する。傷口に感覚障害がある場合は神経の損傷を疑う。
刺し傷(刺創):傷口は小さくても深くまで達していることがある。その場合感染を起こしやすい。
擦り傷(擦過傷):皮膚を擦った傷で、出血や痛みがあり、傷の範囲が広く感染も起こしやすい。

傷の手当ての注意事項

  • 傷の手当てをするときに、必ず手を清潔にする。
  • 傷の近くで話をしたり咳をしたりしない。
  • 直接傷口に綿やちり紙を使用しない。細かい繊維が傷口に残り治療の妨げになる。
  • 素手で傷病者の血液に触れないようにする。ゴム手袋がない場合はビニル袋を使う。
  • 血がついた場合は速やかに手を洗う。
  • 傷病者を安静にして、全身の状態をよく見る。保温や体位に注意する。

傷の手当ての基本

出血が少ない場合

開放性の傷は感染の危険が高いので、傷口に保護ガーゼを当て、包帯をして医師の診察を受ける。

土や砂などで汚れた場合は破傷風や壊疽などの危険がある他、化膿したり傷の治りに支障をきたす場合がある。

受傷後速やかに水道水などの清潔な流水で傷口に異物が無くなるまで十分に洗います。

出血が多い場合

直ちに止血して急いで医療機関に搬送します。

教科書を見ました。再度状況を振り返ると

傷口の処置にドレッシング材を使用したことは判断が間違っていたと思います。

保護ガーゼで傷口は保護できていますが、テープが強固なため病院受診時に再度傷口を広げてしまう可能性があるからです。

保護ガーゼの上に包帯を巻くことが正解だと思います。

血液の凝固を防ぐ服薬をしていないかの現場での確認も怠っていました。服薬状況は知っていますが、1番最新の情報の確認は必要です。

今回は、傷口の処置の仕方と知識が不足していました。

訪問リハビリでは家で転倒に遭遇することはよくあります。

骨折に対する処置だけでなく、

けがに対する知識や準備も重要であることが今回のケースで痛感させられました。

医療職でない人はもっと焦ると思います。

今回のケースを役立ててもらえれば幸いに思います

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