筋肉の中は会社と同じ。

転ばぬ先の対策


高齢の方は多くがどこかの関節に問題を抱えています。
筋肉を付けたいと運動を始める方は多いものの、他の関節が痛くなったり、筋肉がなかなかつかずに続かない方が多いのが現状ではないでしょうか。

私の実感では、膝が痛くて病院を受診しするような方でも、医師や医療従事者に指導された運動方法を実行できる方はごくわずかです。

そこで今回は、実行に移す動機付けとなることを目標に筋力増強の根本的な理論についてお伝えします。

筋力増強

筋力増強の基本原則
最大数の運動単位が同時に働く 
『運動単位:1つの運動神経が支配している筋繊維の集団』 会社で例えるなら会社の中の1つの部署
インパルスが同期する
『インパルス:神経の中を伝わっていく活動電位』会社で例えるなら社長の指示が複数の部署に届く
運動単位の活動リズムが同期化する 会社で例えるなら部署が目標について一致団結していくこと

あまり運動しない人の筋肉の中を妄想し会社で例えた内容です。

『会社は成熟期を超え衰弱期に差し掛かった所で、会社の中に派閥ができ全ての人が同じ目標で働いていません。部署はの繋がりもほとんどありません。1人1人の生産力も低下しています。

 そんな状態の会社に、いつも以上の仕事量を依頼されると、社長の指示は全体に行き渡らず、1つの部署では働き過ぎて休職者が続出し、そのせいで他の部署が代わりに働きます。しばらくすると、休職者が復帰すると部署が再開されます。

しかしながら、そんな仕事が続くことで社長の指示は全体にスムーズに行き渡り、1人1人の生産力は上り、他部署との連携も良くなります。これを繰り返すことで全体の効率が上がり、会社として大きくなってきます。』

社長の指示がスムーズになる:筋肉を収縮させる神経系の向上により、より多くの筋繊維が収縮する。

1人1人(筋繊維)の生産力が増えること
筋繊維はたんぱく質などによってすぐに補修されます。 切れる・補修するというはたらきを繰り返すとだんだん強い筋繊維が作られ、切れにくくなっていきます。 これをさらに繰り返すと筋繊維が太くなります。

実際の筋力トレーニング

最大筋力に満たない負荷では、全ての筋肉が参加しているわけではありません。参加している一部の筋肉が疲労すると、他の筋肉がそれに代わって活動し、長期間にわたり運動を続けられるようになります。これは持久力の範疇に入ります。

逆に最大筋力を発揮するような負荷を与えることは困難です。それは強靭な精神力(集中力)と筋活動の統合を必要としますが、病院で患者にそれだけのものを要求することは不可能です。また、最大負荷は筋肉や関節の損傷を伴うことがあり、危険です。

そこで、最大筋力に近い負荷を繰り返し与える方法が使われます。それにより、個々の筋繊維の張力は徐々に低下し、最終的には全運動単位が参加しないと負荷に抗することができなくなります。これにより、最大筋力を発揮したのと同じ状態が得られます。

運動の方法として、筋肉は関節を動かさない収縮の仕方と、関節を動かす収縮の方法があります。

等尺性収縮(関節を動かさない)

腕相撲が拮抗したような状態で関節を動かさない運動(筋の長さが変わらない)を等尺性収縮と言います。

効率よく筋力を増強しようとするなら最大筋力の60%以上の負荷が必要です。

負荷の強さと収縮の持続時間には関係があり、40%の負荷では20秒の収縮が必要です。ただし、年配の方にはこれだけの時間の集中は難しいです。

長期間寝たままだった方が立ったり座ったりすると、自然とこのような負荷がかかることが多いです。筋活動に伴う局所の栄養状態の改善も相まって、ある程度は自然に筋力が回復します。

最大筋力に対する割合   最低限度   適正範囲      
40〜50%          15〜20秒   45〜60秒
60〜70%          6〜10秒   18〜30秒   
80〜90%          4〜6秒    12〜18秒 
100%           2〜3秒    6〜10秒

変形性膝関節症の人が関節の負担をかけないよう行う筋力トレーニングがこれに当てはまります。

膝を伸ばしたまま、10cm踵を上に持ち上げ、5秒保持を10回、2〜3セットします。
痛くなかったとしても両足とも行います。片方の膝を庇って反対の膝が痛くなることが多いからです。
この運動は膝の疼痛軽減効果があります。運動をしてみて痛みがなければやってみましょう。

等張性収縮

スクワットのように筋肉の長さが変わる動作では、1回しか行えない最大負荷を基準とし、その負荷の約60%以上が筋力向上に必要とされます。効率よく筋力を増強するためには、さらに高い負荷が必要とされています。

100%なら反復回数は1回
95%なら反復回数は2〜3回
90%なら反復回数は4〜5回
85%なら反復回数は6〜7回
75〜80%なら反復回数は8〜10回

3〜4セットで、セット間の休憩時間は30秒から1分間です。


関節可動域全てに及ぶ運動をすること、関節可動域に問題がある場合はストレッチや理学療法を受ける必要性があります。

高齢者の筋力向上の頻度

高齢者は1セットで回数は10〜15回、運動の種類は8〜10種類(足を上に持ち上げる・横に上げる・後ろに上げるなど下肢等の運動の向きを変えること)を最低週2回してもらう必要があります。

最後に

筋力訓練の理論だけでは解決しません。実行が必要です。
膝が痛くて日常生活に支障がある人に、膝の痛みを軽減する運動を説明しても、実行できないことがよくあります。その場合は通院して筋力トレーニングを行う方法もあります。ただ、今後のことを考えると、症状についての理解を深めて運動を続けることが有意義だと思います。

本人の運動に対する抵抗感も問題です。普段全く運動をしない人は、加齢による筋力低下で膝の変形が進んだ場合、運動習慣を作ることが大きなハードルになります。運動を始めた人は、その努力をまず褒めるべきです。

毎日散歩をしていて膝の変形が進んだ人は、効果のある方法を確実に実行することが重要です。散歩を控え他の運動の仕方や回数、セット数を守ることで効果が出ます。筋力がつくことで関節の負担が減り、以前の生活ができることが良いです。

このように、運動は個人の特性に合わせて行われるべきです。筋力に関しては薬で治したり、運動せずに増強する方法は今のところありません。自分に合った運動内容を見つける必要があります。

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