私たち理学療法士(PT)は、病院や施設で日々「身体機能の向上」に全力を注いでいます。しかし、退院した患者さんが、車社会の地方で「運転」を諦めた途端、社会との繋がりを失い、一気に生活不活発病(フレイル)へ転落していく姿を何度も見てきたはずです。
「筋力は維持しているのに、なぜか元気がなくなる」。その理由は、身体機能の低下ではなく、社会参加という「目的」の喪失にあります。今、地域リハビリテーションに必要なのは、病院の中の筋トレではなく、生活を再構築するための「武器」を渡すことです。その武器こそが、スマートフォンです。
「スマホなんてPTが教えなくても……」と思うかもしれません。しかし、ここにこそPTの専門性を活かすブルーオーシャンがあります。
なぜ、理学療法士がやるべきなのか?
スマホ操作に苦労する高齢者の背後には、必ず「身体的な障壁」があります。
- 指先の乾燥や変形による操作困難(巧緻性の評価)
- 端末を持ち続けることで生じる頸部・肩の痛み(バイオメカニクスの評価)
- 視認性の低さによる意欲低下(感覚機能の評価)
これらを評価し、タッチペンの選定や環境調整を行うことは、立派なリハビリテーションです。最新の研究でも、ICTを活用する高齢者は歩数が多いことが証明されており、デジタル支援は「歩行意欲を支えるための介入」と言えます。
地域で「デジタル・リハビリ」を広める3ステップ
この活動を自身のキャリアや副業として確立するための、具体的なロードマップを提案します。
1. 身体機能に焦点を当てた「個別アセスメント」
まずは「スマホを使える身体環境」の評価から始めます。PTの視点で最適な道具(スタンドやペン)を処方し、リハビリテーションの延長線上で操作指導を行います。これにより、単なるパソコン教室とは一線を画す「専門職としての信頼」が得られます。
2. 生活動作(ADL)をスマホで拡張する
「操作を覚える」ではなく「生活を変える」ことをゴールにします。
- 重い荷物の運搬を「ネットスーパー」で代替し、浮いた体力を「散歩」へ。
- 家族との「ビデオ通話」を、歩行訓練の最大のモチベーションに。 スマホをQOL向上のための「補助具」として処方するのです。
3. 地域の「通いの場」をデジタルで繋ぐ
既存の「いきいき百歳体操」などのグループへ出向き、集団指導を行います。参加者同士をデジタルで繋ぐことで、私たちがいない時間も「社会参加」が継続する好循環(持続可能なコミュニティ)を作ります。
これからのPTの、新しい働き方へ
病院の壁を越え、地域で「生活のプロ」としてスマホを活用した自立支援を行う。これは、高齢者の健康寿命を延ばすだけでなく、私たちPT自身のキャリアの幅を大きく広げる挑戦です。
「リハビリテーションは、身体を動かすことだけではない。人生を動かすことだ」。 そんな想いを持つ仲間と一緒に、この「デジタル・リハビリ」という新しい形を地域に実装していきたいと考えています。


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