脳梗塞の後遺症で手足が異常に緊張する痙縮。痙縮に対する治療「ボツリヌス療法」について。持続伸張についても。

【徳島限定】シニアあんしん生活

脳卒中などの後遺症で手足が思うように動かない、関節が固まってつらい、といった悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方々にとって、「ボツリヌス療法」は、関節の悩みを和らげ、より快適な生活を送るための有力な選択肢の一つです。これは、一般的に美容の分野で知られる「ボトックス」を、治療に活用する方法です。

そもそも、なぜ関節が固まるのか?

関節が固まる主な原因の一つに「痙縮(けいしゅく)」があります。これは、脳卒中などで脳からの指令がうまくいかなくなり、筋肉が異常に緊張してつっぱり、手足が曲がったままになってしまう状態です。このつっぱりが続くと、筋肉や関節が固まり、やがて「拘縮」へと進行します。

ボツリヌス療法が効く仕組み

ボツリヌス療法は、筋肉が収縮する(力が入る)際、神経から筋肉に対してアセチルコリンという伝達物質が放出されますが、ボツリヌス毒素はそのアセチルコリンの放出を阻害して、余分な筋収縮を抑える働きがあります。

注射をすることで、筋肉のつっぱりが和らぎ、これまで動かしにくかった関節が動くようになります。

期待できる効果

  1. 関節の動きをスムーズに: 固まっていた筋肉が緩むので、関節が動かしやすくなり、拘縮の悪化を防ぎます。
  2. リハビリの効果アップ: 筋肉のつっぱりが取れることで、これまで難しかったストレッチや運動療法が楽にできるようになります。この治療は、リハビリと組み合わせることで、最大の効果を発揮します。
  3. つらい痛みの軽減: 筋肉のつっぱりからくる痛みが和らぎ、生活が楽になります。
  4. 毎日の生活が快適に: 手足が動かしやすくなることで、着替えや食事、入浴といった日常の動作が格段にしやすくなります。
  5. ご家族の負担を軽く: 介護をしてくれるご家族にとっても、着替えやお世話がしやすくなるため、負担を減らすことができます。

治療の進め方と注意点

  • 治療対象: 痙縮が原因で関節が固まっている方が対象です。
  • 治療方法: 緊張している筋肉に、細い針で直接注射します。超音波エコーなどを使い、正確な場所に注射を行います。
  • 効果の期間: 2〜3日で効果が現れ始め、通常3〜4ヶ月ほど持続します。効果は徐々になくなるため、継続する場合は定期的な注射が必要です。
  • 重要なのはリハビリ: 注射で筋肉を緩めた後、動かしやすくなった時期にしっかりとリハビリを行うことが、機能回復の鍵となります。

この治療は、痙縮の悩みを抱える方にとって、生活の質を大きく向上させる可能性を秘めています。ご自身の症状がこの治療に適しているか、また具体的な治療計画については、まずは専門の医療機関にご相談いただくことをお勧めします。

参考動画

治療の流れ

①外来診療にて状態の確認・評価

②投与量・投与日の決定と予約

③1~2週間の集中的なリハビリテーションの実施

④定期的に状態の確認・評価 ①に戻る

具体的な例

脳の疾患で寝たきりの方:左肘が痙縮により曲げたままとなっている。更衣の介助に支障をきたし、肘の内側に汗をかきやすく、ケアが必要。

肘は最大限曲げており、手の関節が胸に届きそうな状態(肘関節屈曲:上腕二頭筋短頭)。上腕二頭筋の痙縮あり。手首は反らす方向に曲がっている(背屈:尺側手根伸筋)。

上腕筋の

肘の痙縮に対して上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋等にボツリヌス療法を実施。

注射後、3時間以内にリハビリや自主訓練を行うとこで、よりボツリヌス治療の効果を高めることができる。

上腕二頭筋のストレッチ方法

(真ん中の画像)上腕二頭筋腕橈骨筋間のリリース:

両筋間に指を入れ、上腕二頭筋の防御性収縮が出ない範囲で肘を屈伸させる。

(右の画像)上腕二頭筋のストレッチ:上腕二頭筋の防御性収縮(伸ばそうとすると力が入る)が強い場合に行う。肘を軽度曲げて、上腕二頭筋の筋腹を持って手前に引っ張る。

上腕筋へのアプローチ:
腕尺関節のレベルで上腕筋の筋腹を挟み込むように持って内側から外側に圧迫する。あまり強く押すと痛いので指の腹で優しく圧迫する。

上腕二頭筋・円回内筋回外筋へのアプローチ:
上腕二頭筋の遠位で、橈骨粗面を圧迫しながら親指を反時計回りに動かす。橈骨頭の後方への滑りを促す。

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